Reports From UKRAINE of CHERNOBYL-CHUBU OFFICIAL SITE

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 ウクライナ駐在員、竹内高明が伝える「ウクライナ」。
(2013年3月帰国)
そのほかウクライナ現地からの声をお届けします!

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竹内のウクライナ情報 (2017年7月19日)

 大変ご無沙汰しております。1994年9月から2013年3月まで、18年と半年ほど暮らしたウクライナから帰国、今は栃木県の某私立大学に奉職している私ですが、ウクライナの友人知人とメール等のやりとりを続け、またウクライナ人の連れ合いと暮らす中で、滞在当時ほど情報収集の時間は割けないにせよ、ウクライナの現在を気にしながら生活していることに変わりはありません。「救援・中部」の活動を通じてウクライナのことに関心を持たれた方たちに、私の耳目に入ってくるこの国のニュースのあれこれから、あくまで個人的な興味を基に、自由に、しかしできる範囲で客観的にお伝えしていければと思い、この場を拝借することにしました。短めの記事をなるべく頻繁に載せていきたいと思いますが、確約はできません…。以上、前口上まで。
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[写真:スプルーン保健大臣代行]
さて今回は、しばらく前からウクライナのメディアで取り上げられている医療改革について、簡単に触れたいと思います。現在のウクライナ保健省のトップは、保健大臣代行(彼女は、昨年7月末からずっとこの肩書で執務していますが)のスプルーン氏です。アメリカ合州国デトロイトの出身で54歳、ウクライナ系の家族に育ち、放射線科医として米国で働いたのち2013年秋に夫君とウクライナに移住。おりしも勃発した「革命」の中で、抗議行動に参加し傷を負った人たちの救急治療に従事、やがて「ウクライナ人世界会議」の代表となり、また「愛国者の防衛」[直訳]なる市民団体を創立した後、ウクライナ国籍を得て、2015年6月保健省副大臣に抜擢されたそうです。同氏がニュース・サイト「ウクライナの真実」に寄稿した記事(7月13日付、原文ウクライナ語)によれば、現在国会(最高会議)の第2読会に向け準備された法案では、改革後の公立医療機関による医療サーヴィスは、100%国家負担、または100%患者負担のいずれかに分けられることになっている由。ちなみにウクライナの2017年度国家予算中、医療費はGDPの3.4%(EUの古株諸国では、平均約8%)。
現状はどうかといえば、憲法では未だに「医療は無償」とされているものの、医療施設の予算不足の結果、これは純然たる建前と化しています。例えば(ごく大雑把な説明ですが)、ある公立病院に配分された年間予算(現行の制度では、ベッド数と建屋面積で計算される)で調達できる分の医薬品がなくなってしまった時点で、同院の患者は100%自己負担で医薬品を購入せざるを得なくなります。また、公立病院の医療関係者の給与が安いこともあり(医師なら円にして月額平均2万円弱。都市部の有能な医師であれば、生計を維持するため、私営のクリニックを含むいくつかの病院をかけもちして働いているケースもあります)、入院患者は病院への「寄附」や担当看護師・医師への非公式な「謝礼」を支払わなければ、受けられるべき処置も受けられない、というのが現実です。このようなダブル・スタンダードを解消するための荒療治として、「一次医療及び救急医療は無料、それ以上は患者負担」という制度が導入されようとしているわけです。
しかし同じスプルーン氏の記事から引用しますと、世論調査によれば、ウクライナ人の71%は「国の負担が70%、患者負担が30%(またはそれ以下)」というパターンがよいと回答しており、上記「全額国家負担・または全額患者負担」のパターンはあくまで過渡的なものと氏は弁解しています。一次医療での改革は2018年1月から始められることになっている由。「我々はすべての資金を最も末端の施設に提供し、中央集権のシステムを患者のレヴェルに引き下げる[中略]。国は100億グリヴナ[竹内注:現在1ドル=26グリヴナ前後]を追加で保健改革に割り当てた。その大部分はまさに一次医療に充てられるのである」とも書かれています。今後の経過が注目されます。
一方で同じ7月13日、年金改革法案が国会の第1読会を通過しており、これも私たちの支援対象であるチェルノブイリ事故の被災者らにとって極めて重要な問題ですが、改めてご紹介したいと思います。それではまた。